
Towards the light
油彩・キャンバス
100.0 × 65.2cm | 25 1/2 × 39 1/4in
私の故郷である日本の大分県の山の奥地、九州でも残り少なくなった、人の手が加えられる事なく伝え残されてきた【男池原生林】をモチーフとした油彩画です。
大分県と熊本県にまたがる「阿蘇くじゅう国立公園」にある九重連山のひとつ「黒岳」の北側、標高850メートルの場所にあるこの【男池原生林】この原生林には、ブナ、ミズナラ、カエデなどの巨木が数多く存在し、森に一歩足を踏み入れれば、樹齢数百年越えの崇高なる古木郡が頭上を覆い隠します。
かつてこの森には猟師が入る程度で、その猟師ですら道に迷う事が度々あったと伝えられています。
太古の昔、この森へ入った猟師が迷い帰り道を失い、山中で囲碁に興じていた仙人と出会い帰り道を教わり里へ下山したところ、山で過ごした1日が里では1年経っていたという、日本版リップ・ヴァン・ウィンクルのような逸話も古より伝承されていまして、長きに渡り「神秘の森」と呼ばれていた時代があります。
私がこの作品制作にあたり初めて現地を訪れたのは2017年9月某日。
暑かった夏も終わりを告げ、秋の訪れを感じるようになったある日の夕暮れ時をキャンバスに描き残しました。
この幻想的な空間を、事実は尊重しながらも、ただ表面的な技巧だけでなく、そこを吹く風、土の匂い、そして小川のせせらぎまでも体感したまま表現できるよう意識し、そしてどこか心象風景のようにも描き表現できればと思い数ヶ月に渡り現場を訪れ取り組んだ作品です。
この世界は敬意を払うべき自然美に満ち溢れていて、我々人類の歴史は、その崇高なる自然からの恩恵があってこそ成り立っているように思えます。
本作品には、そんな母なる自然に対し私なりの感謝の気持ちを込めました。